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【第一話②】お弁当を守る

ドキドキハラハラのレジ打ち対決のあとは、今夜のご飯をかけたお弁当争奪戦!ハンバーグ弁当の行方はいずこ!?

午後7時40分。

うちのスーパーは8時閉店なので、あと20分で家に帰れる・・・!!そこで問題なのが、「夜ご飯どうするか問題」

今、家の冷蔵庫には賞味期限1ヶ月切れの納豆2パックとラップをし忘れたブロッコリーに玉ねぎ。あと、微妙に余っているお茶漬けの素くらい。

どうにか私は売れ残りの弁当を持って帰りたいのだが、今残っているのはほしい順で「ハンバーグ弁当」「天ぷら弁当」「ごぼうあげ」「ふやふやのたこ焼き」それぞれ2つずつある。

今の時間は、上司に残業を強いられ黄にか帰ってきたが、もうすでに夜ご飯は妻と子供に食べ尽くされて作る気力もないので滑り込みで来た30代男性や、6時半くらいからずっとスーパー内を歩き回り、割引シールを貼ったとたんその商品を買い込むが一向にレジにこず、最後の最後まで割引シールをはられることを諦めないおばさんがメイン。

そいつらの手をどうにかかいくぐりたい・・・

同じように理恵、洋子さん、テツコもお惣菜コーナーから離れない。

閉店になって、制服から私服に着替えてから、店長にお弁当をもらっていいかの許可をとりやっとゲットできるので、みんな更衣室の位置、店長の位置、お客さんの位置全てを把握し、閉店に備えている。

ーーー

脳内で閉店後のシミュレーションをしながらも、私はあくまで店員。

お客様にこの殺気だった空気を感じ取られてしまってはいけないので、売れ残りがバラバラと残る惣菜コーナーの棚をゆったりと整える風を醸し出しながら、お弁当がなくなりませんように、と念じ続けた。

ーーー

閉店まで残り5分。

店内のお客様もまばらになり、今日のターゲットであるハンバーグ弁当もあと1個残っている。

私は、家に帰ってお気に入りのルームウェアに着替えて、レンジで温めたジューシーなーハンバーグを頬張るイメージをして口の中がよだれでいっぱいになった。

ここで、ふと今日の私服を思い出して深い絶望感に襲われた。誰よりもスピーディーに着替えたいこんな日に限って、今年雑誌で一目惚れしてわざわざ東京のショップまで出向いて、キャンセル待ちの末ゲットした編み上げブーツを履いてきてしまった・・・。

膝上までのロングブーツは、the日本人な私の足をスラリと見せてくれる魔法のアイテム!でも、今日は絶対に違った・・・

ファスナーブーツならまだしも、手できゅっと締め上げてリボン結びするタイプのこのブーツは、お弁当レースの負け確定である。

さあ、どうする!?考えろ、考えろ!

ここで私は閃いた!そうだ、靴を履き替えるのを忘れたふりしよう。

実際、私たちはたびたび職場用のペタンコパンプスで帰ってしまい、帰りの電車で自分の足元が絶望的にダサいことに気付いてトートバッグでこそっと隠すことがあった。

でも今日は、この鬼ダサいパンプスに感謝しかない。

ありがとう!!トミオカオリジナルブランドのダサいパンプス(2,980円)

これで私のハンバーグダッシュプランを完璧!来い!閉店の音楽!

♪♪♪♪♪♪~

キターーー!

今静かにお弁当レースが始まった。

みんな少しでも早くロッカーに向かおうと、片付けしている雰囲気を装って一歩一歩ロッカーの入り口に向かっている。

私も負けじとあちこちに散らばった買い物カゴを回収しつつ、ロッカー方面に向かう。

位置取りカンペキ!これはハンバーグゲットの予感。

そう思ってひとりニヤニヤしていると、店長がこちらにやってきた。

店長:古山さん、いい顔してるねー!今日の閉店挨拶よろしく!

終わった・・・私のお弁当レース終ーー了ーー。

閉店挨拶とは、出入り口に立って、最後のお客様が帰るまでにこやかに挨拶をしづつける担当。大概店長がやってくれるのだが、今日に限ってハンバーグゲット妄想でニヤニヤしていたがために指名されてしまった。

私は、おそらく誰も持って帰らないであろう切り干し大根の惣菜のm美味しいけどお前じゃない感にがっかりしながら、乾いた笑顔で入り口に向かった・・・

ーーー

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